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■ひとり、ふたりと辞めていく

民進党代表である蓮舫氏の求心力の低下が止まらない。

4月10日に長島昭久元防衛副大臣が離党届を出したのに続き、13日には細野豪志氏が代表代行を辞任する決意を固めた。

蓮舫氏は7月に控える都議選に向けて、共産党と共闘する姿勢を崩さないが、これに対して長島氏と細野氏は強い反感を抱いたのだ。

民進党の支持率は今年に入ってひとケタ台で低迷していて、「自民一強」体制はますます色濃くなってきている。

振り返れば、民主党時代の'12年も消費増税をめぐって党内がバラバラになり、勢力を落とした。今回もまるで同じ様相を呈しているが、民進党は仮にも野党第一党だ。民進党の「没落」は、今後の政局および日本経済にどれほどの影響を与えるのだろうか。

 

民主党時代の消費増税騒動のとき、当時の首相は野田佳彦氏であった。

その野田氏は政権交代選挙となる'09年8月の衆院選の街頭応援演説において、有名な「シロアリ演説」をしている。

天下り官僚をシロアリにたとえて、「シロアリを退治しないで増税はおかしい」と宣言した。さらにこの演説では、「マニフェストは命がけで実行する。書いてないことはやらない」とも言った。

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ところが政権交代後、野田氏はすっかり変わってしまった。

鳩山由紀夫政権で藤井裕久財務相の下で副大臣になったのだが、実はこのとき、財務省OBである藤井氏が後輩の財務省官僚に対して野田氏を「財務省色に染めろ」と指示。結果、野田氏は完全に財務省の操り人形になり、「シロアリ演説」での意気込みはどこかへ飛んで行ってしまったのだ。

かくして党内の意見がバラバラになった民主党は政権を手放すことになるが、その「戦犯」の一人は野田氏であり、その野田氏がいま民進党の幹事長を務めていることからも低迷の理由は推して知るべし、である。

■日本経済は命拾い

もともと民主党が仕込んだ消費増税は、自民党に政権交代したあとに実施された。

'14年4月、税率は5%から8%になったが、10%への再増税はすんでのところで止まっている状態だ。'14年の増税は、日本経済にとっては爆弾が爆発したようなもので、アベノミクスで上げ調子の兆しがあった景気が一気に停滞した。

もし再増税という「2発目の爆弾」が立て続けに爆発していたら、日本経済はとっくに沈没していたかもしれない。

民進党は依然として、財源の確保に増税は不可避であるとの方針を持っているが、いまの蓮舫代表・野田幹事長の体制で民進党が勢いを取り戻したら、2発目の爆弾が炸裂するのは秒読みとなる。

逆にいえば、民進党の分裂が進むだけ再増税の可能性が減り、日本経済は「命拾い」することになる。

今後の政局を見るうえで気にかかるのはマスコミの動向である。

新聞を中心とするマスコミのなかには、消費増税に関して賛成の立場を取るものもある。というのも、増税が達成されれば、新聞への軽減税率が適用されることになるからだ。

だからマスコミは「野党分裂」の現状よりも「自民一強」を強調することで、消費増税の議論を読者の目につかないようにしているふしがある。マスコミがやたらと野党を持ち上げているような報道が出たときは、一歩引いて見たほうがいい。

『週刊現代』2017年5月6・13日号