アベノミクスで儲けた面々や海外投資家らが湾岸の高層タワーマンションを買い漁り、都市部で局地的に起きている不動産バブル。しかし、危険水域にあることを示す兆候がいくつも出始めている。バブルがはじけるのも意外に早そうだ。

■「早ければ夏から」と専門家

 18日、不動産経済研究所が発表したデータに不動産業界は衝撃を受けている。4月の首都圏(東京、神奈川、埼玉、千葉)の新築マンション発売戸数が前年同月比7.6%減の2286戸と4カ月連続で減少。4月としては1992年(1365戸)以来の低水準を記録したのである。

 住宅ジャーナリストの榊淳司氏が言う。

「ひと桁に収まっているのでハデな印象はありませんが、前年割れが4カ月連続なのはディベロッパーが急激に萎縮し始めている証左です。基本的にディベロッパーの営業方針はイケイケ。営業マンは何とか前年の販売実績を上回ろうと頑張ります。それができない、というよりは恐らく、意図的にしないのでしょう。今の建築コストの上昇と地価高騰分を回収できないリスクが高いと判断したのだと思います。バブル崩壊を警戒しているのは明らかです」

 危険水準に達しつつあるのは新築マンションだけではない。不動産調査会社の東京カンテイの調査によると、東京23区の中古マンション価格は1年前に比べ約8%上昇したが、上がり続けるのは今後1年間だけで、17年春以降は頭打ちになる可能性があるという。

 もっと深刻なのは、賃貸の動向だ。首都圏の今年4月の分譲マンションの賃料は前月比0.5%下落した(東京カンテイ調べ)。前出の榊氏が言う。

「私が取材している感触では、下落幅は0.5%なんてものではありません。賃貸は完全な借り手市場。一定期間の家賃を実質的に値引きする“フリーレント”などを含めると、この3~4年間で2割以上下がった印象です。賃貸は外国人の“投機マネー”などの影響が少なく、人口減少などの影響がモロに出ます。需要が減り、価格が下落するという当たり前の動きをしています。賃貸価格が下がれば、当然、新築と中古物件の下落圧力になります。賃貸に引っ張られる形で分譲マンション全体の値段が下がるのは時間の問題でしょう。早ければ、夏以降に始まるかもしれません」

 目先の数字とアベノミクスのお祭り騒ぎで不動産業界は好景気に沸いているように見えるが、“バブル”がはじける兆候はいくつもある。購入を検討している向きは警戒した方がいい。