財務省が、在名古屋中国総領事館(名古屋市東区)の移転候補地だった同市北区の国有地について、売却しない方針を中国側に伝えていたことがわかった。2010年の尖閣諸島沖漁船衝突事件以降、日中関係の緊張が続き、財務省が判断を保留していた。日中関係改善の動きの遅さが影響した形だ。

 対象の国有地は、同区名城3丁目の約8千平方メートルの公務員住宅跡地。財務省が10年4月に売り出し、同年秋にも売却先が決まる予定だったが、同年9月に尖閣沖の漁船衝突事件が発生。保守系団体の売却反対運動や中国への抗議行動が強まり、河村たかし名古屋市長大村秀章愛知県知事が11年3月、国に対し売却の凍結を申し入れていた。

 河村氏と名古屋市議会は今年3月、この土地について「良好な住環境の保全」に努め、市民が広く利用できる文教地区とすることを決定。治安上の不安があることを念頭に、中国側への売却を認めない姿勢を鮮明にした。