新台導入の数が約半分に! その原因とは

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 2016年のパチンコ遊技機、回胴式遊技機(スロット)の販売(納品)台数が前年に比べ大幅にダウンしたことが分かった。

 昨年のパチンコ遊技機の総販売台数は約166万台(昨年比16%ダウン)、回胴式遊技機は約81万台(昨年比27.5%ダウン)。

 現在、日本全国にパチンコ台は約300万台、スロット台は約150万台ある(平成27年度警察庁調べ)と言われており、昨年の販売台数は、全国総設置台数の約半分しか売れなかったということである。ちなみに、10年前の2006年には、パチンコ遊技機だけで400万台以上販売している。

 なぜ、これほどまでに遊技機は売れなくなったのか?

 パチンコ遊技機、回胴式遊技機の販売が低調な理由は、いくつか挙げられる。

◆新台へのこだわりより長く遊びたいニーズ

 一つは、「新台入替」の効果の減少である。

 近年、パチンコ店は「新台入替」を謳い集客を図ってきた。目新しさは勿論であるが、昔ながらのパチンコ店の慣わしである新台入替時の出玉に期待し客が集まってきた。しかし最近では、遊技機価格の高騰により店舗の営業が圧迫される一方、過剰な広告宣伝(煽り)に対する厳しい規制などの影響により、「新台=玉(メダル)が出る」という方程式は、店側は勿論、客の中で崩れ去って久しい。ガンガン新台を買い、ガンガンお客さんを呼ぶという時代ではなくなったのだ。

 もう一つは、「1円パチンコ」、「5円スロット」に代表される低貸玉営業の広がりが挙げられる。

 旬な遊技機が好まれる「4円パチンコ」、「20円スロット」に比べ、低貸玉で遊技するお客さんは、新台へのこだわりより、長く遊びたい(もしくは時間つぶし)というニーズが高い。そもそも、薄利多売がモットーの低貸玉営業で新台入替をしていては、遊技機購入費用の償却もままならない。低貸玉営業コーナーのフロア拡大や専門店の登場に反比例する形で遊技機の購入動機が薄らいだ。

その他、遊技機スペック(≒出玉性能)の低下やコンテンツの飽和、ゲーム性の画一化等の理由による遊技機のオリジナリティ欠損は、お店にとっても客にとっても、遊技機の魅力を感じづらいものにしている。

◆新台販売低調で追い込まれるメーカー企業

 深刻なのは、メーカー企業である。特に上場している企業にとって、歯止めの掛からない新台販売台数の減少は、そのまま業績ダメージとなる。

 東証1部上場の「平和」の、平成29年3月期の第2四半期の決算短信によれば、前年同四半期比で売上が21.7%の減収、営業利益、経常利益12%ほど減少している。勿論、メーカーによって「鉄板コンテンツ」と言われるビッグタイトルの販売時期によって、期毎の数字は変わるが、それでも通期でプラス転換は難しいと思われる。

 同じく東証1部上場のパチンコ・パチスロメーカー「SANKYO」も、平成29年3月期の業績予想を大幅に下方修正している。売上で前期比30%以上の減収、営業利益、経常利益に関しては70%~80%の減少が見込まれている。

「平和」や「SANKYO」などの大手老舗の大メーカー企業ですらこの様な状況である。中小メーカーにとって、下げ止まらない販売台数の減少は、企業の存続に直結する大問題だ。

◆今後も新台販売台数が回復することはない

 この新台販売減少傾向が下げ止まることはあっても、劇的に回復することはない。

 メーカー単体で見れば、ビックコンテンツの遊技機を市場投入することで、一時的に業績が回復することはあるだろうが、業界全体でみれば一過性のものに過ぎない。

 メーカー側としては、遊技機販売台数が伸びないのであれば、今後は販売価格を上げる。そうなれば、パチンコホール側は更に買い控える。売れない遊技機を巡る負の循環。まさに後戻りの出来ないチキンレース。

 売りたいメーカー。買いたくないパチンコホール。その呷りを喰うのは、いつも客である。

〈文・安達 夕〉