世界文化遺産に登録された「明治日本の産業革命遺産」で、戦時中に同遺産の一部施設で行われた朝鮮半島出身者の徴用を「forced to work(働かされた)」と英語表記したことに「強制労働を認めてしまった」「世界遺産登録のために譲歩し過ぎ」と批判が相次いでいる。安倍晋三首相(60)は弁明に躍起だが、完全に韓国側にしてやられてしまった格好だ。韓国がここまで「強制連行」「強制労働」という言葉にこだわるのはなぜなのか。

 世界遺産の登録については、先月の日韓外相会談で日本が韓国の「百済歴史地区」、韓国が「明治日本の――」の登録支持を、それぞれ協力すると約束したはずだった。

 しかし、国連教育科学文化機関(ユネスコ)世界遺産委員会での審査直前に韓国が「強制労働」という言葉を入れろと反対し、審査のためのスピーチで、日本の佐藤地(くに)ユネスコ大使が「1940年代に一部の施設で大勢の朝鮮半島の人々などが意に反して厳しい環境下で労働を強いられた」と述べることになった。韓国にねじ込まれる形で、後味の悪い登録となった。

 安倍首相は10日の衆院平和安全法制特別委員会で徴用を「forced to work(働かされた)」と英語で表記したスピーチに対し、「forced labor(強制労働)を意味していない」と適切だったと強調したが、自民党の総務会では「いくら強制労働でないと説明しても、一般には伝わらない。“カラスは白い”と説明するようなもの」と、身内からも散々だ。

 結局、世界遺産登録と引き換えに韓国側に譲歩したことは揺るがない。振り返れば、あの「河野談話」も、「談話の中で慰安婦連行の“強制性”を認めてくれれば、今後このことで補償その他を要求しない」という韓国側のウソに乗せられて出されたものだった。

 韓国が「強制」という言葉に執着するのはなぜか。「韓国呪術と反日」などの著作がある文筆人の但馬オサム氏は「3つの理由が複合的に絡んでいる」と指摘する。

 1つ目はいうまでもなく、実利的な理由。すなわち賠償という“たかり行為”だ。いずれ韓国の民間団体が、世界遺産「明治日本の――」の一つである長崎県端島炭坑(軍艦島)を「監獄島」「奴隷島」などと呼んで、賠償金を請求する運動を起こすことは明らかだ。
 2つ目は、国際社会における日本の評判を落とす「ジャパン・ディスカウント」のためだ。

 但馬氏は「韓国人は日本の評価が下がれば、相対的に自分たちの評価(地位)が上がると思い込んでいます。彼らの世界観とは、自国と日本、それを取りまく世界というシンプルな構造になっているのです」と語る。

 そして3つ目は、2つ目の理由とも関連するのだが、韓国人特有の序列(優劣・上下)感覚だ。「“強制連行”をした側は加害者であり、当然、された側は被害者となります。加害者は被害者より道徳的に下位にあるというのが韓国人の考え方です。道徳的下位のものは上位の言うことを聞かねばなりません」(但馬氏)

 日本人は、相手が謝罪し、あるいは賠償すれば、そこで問題が解消され、以後は対等な関係を築けるものだと考える。しかし、韓国人の考えは違う。

「韓国人にとっての謝罪や賠償は、序列関係の契約を意味する。つまり、彼らのいう謝罪、賠償は部屋を借りるときの敷金礼金のようなもの。敷金礼金を払って契約したのだから、毎月家賃を払え、というのが彼らの言いぐさです。何度も謝罪、賠償を要求してくるのはこういう思考回路によるため。日本人からの『何度謝れば気が済むんだ』というセリフは、家賃の滞納と同じということになります。契約不履行なのです」(同)

 つまり韓国人に一度でも謝罪すると、未来永劫、謝罪を要求され、金銭援助を約束させられることになってしまう。謝った方は永遠の弱者、悪になるからだ。「この考え方が身にしみているから、韓国人は自分に100%非があっても絶対に謝りません。反対に日本人は安易に謝罪し過ぎなんです」(但馬氏)

 安倍首相は「(日本政府の『強制労働に当たらない』との見解に対し)韓国は『間違っている』と一度も言っていない」と釈明し、今回のことが問題視されていないというが、韓国メディアは既に“大勝利宣言”している。たかりが始まるのは時間の問題だ。