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"真珠湾攻撃"伝える当時の米社説 [アメリカ 米国]

    

真珠湾攻撃、75年前の社説はどう伝えたか

 75年前の12月7日(米国時間)、日本が真珠湾を攻撃し、日米は開戦に至った。ウォール・ストリート・ジャーナル(WSJ)は翌日の1面と翌々日に社説を掲載した。以下にその一部を再録し、振り返ってみたい。
――1941年12月8日の社説

われわれには責務がある


 WSJの月曜朝刊1面に通例として掲載される経済・金融関連記事は土曜の夜に書かれ、日曜に植字工に渡される。ゲラ刷りが編集部に上がってきたときに、日本がハワイを攻撃したとの速報が通信社から流れてきた。

 その瞬間、先週の出来事が突然、はるか昔の古い時代に遠ざかってしまったように思えた。先週起こったビジネス界や財界関連の出来事は明日や、明日以降に続く日々とは何の関係もなくなってしまったように思えた。

 米国の領土が攻撃されたという厳然たる、かつ恐ろしい現実がここにある。日本は米国との開戦を宣言した。

 米国市民には責務があり、誰もが自分の責務について分かっている。それは誰にとっても重いだろうが、実業家や金融業者のコミュニティーにとっては、犠牲がとりわけ大きなものとなるだろう。

 われわれは言っておく。犠牲をいとわず、責務を果たさねばならないと。
――1941年12月9日の社説

われわれが終わらせる


 昨日の午後0時半、セオドア・ルーズベルト大統領は連邦議会の上下両院合同会議に出席し、対日宣戦布告の承認を要求した。上院は大統領の言葉の残響が消えやらぬうちにこれを賛成多数で可決。下院は可決までに時間を要したが、議員数が多いため確認に時間がかかっただけだ。

 われわれは実質的に挙国一致の決意によって日本と戦争状態にある。その心得は次の通りだ。

1――全市民は個人の利益や偏見、意向に関するあらゆる配慮よりも、国の戦争への貢献を優先させる

2――政府は領土と市民、そして国益の保護を第一の目的として陸・海・空の軍隊を配備しなければならない

3――米国は同盟諸国や英連邦諸国、中国、ソ連、そしてオランダ領東インドと協力すべきだ。ただし、この協力体制は米国の安全より優先されない

4――報道機関と市民は政府の行為を個別の信念に従って批判する権利を保持する。ただし、米国人の犠牲を最小限にとどめた対日勝利のために適切な行為であるかどうかが、その是非の判断基準となる

 われわれは米国と同盟諸国の武力で日本との戦争に勝てるという絶対的な自信を持っている。だが、米国政府は陸軍や海軍の助言による「大局的な戦略」に導かれることが不可欠だ。その時点で想定している計画に費やす軍事的リソースについて慎重に考慮することなしに、敵国から攻撃を受けるか受けないか分からない世界中の人々を守るという危険な試みに、万が一にも引き込まれることがあってはならない。

 及び腰で戦争に臨めと言っているわけではない。全くその反対で、戦争の目的と、目的達成のために即応可能な武力を冷静かつ現実的に算段すべきだと言っているのだ。われわれの軍事的リソースは毎日拡大しており、今やかつてないほどの速いペースで増えている。だが、戦時において進むべき道を決定づける人々は、われわれがもはや民主主義を備えているだけではないことを忘れてはならない。米国は今や、太平洋という戦場の交戦国だ。よって、米国は己の国益を優先しなければならない。連合国の国益は米国の国益が十分に確保された後に初めて満たされることになる。

 国家としてのわれわれの未来は戦闘兵器をできるだけ早く大量に手に入れることにかかっている。その実現が早ければ早いほど、米国の自由を維持するために犠牲を余儀なくされる国民の数は少なくなる。

 ある目的のために、この強いられた戦争を受け入れていることに関して、われわれは一致団結している。それは日本が始めた戦争をわれわれが終わらせるという目的だ。

市場の冷静な反応

 1914年の記憶がある程度まだ新しい金融街では、ニューヨーク株式市場が日米開戦という一報の衝撃をどう受けとめるかについて、関心が少なからず高まっていた。週明けの市場で開始のベルが鳴った瞬間、関心の高まりはたちまち収束した。市場はまったく興奮を示さなかった。寄り付き値に対して何か異例の措置をとる必要性はなかった。株価の変動はかなり穏やかで、商いは通常よりもやや多かったくらいだ。通常ではない何かが起こったことを示すような記録的なものは何一つなかった。

 ここ数年の株式市場やその取引手法などにあまり精通していない人は驚いたかもしれないが、金融街の関係者にとっては驚きではなかった。ニューヨークの株式市場は、以前であれば深刻な機能不全をもたらしていたような激震に明らかに慣れてきている。その理由は数多い。投機筋による持ち高が比較的影響の少ない水準に減っていたこと。1914年にあったような外国人による保有株の精算という脅威がなかったこと。株価はここ数年の高値からかなり低い水準まで下がっていたこと。最後に、企業利益と株価の関係が課税対象分を加味しても比較的好ましい水準にあること。こうしたことが全て、相場の安定に貢献した。

 どんな市場であれ、最も重要なことは安定だが、株式市場にとってはとりわけそうだ。いまのような緊急時においては、安定した株式市場は国の経済インフラにとって最も重要な要素だ。これは何度も繰り返し指摘されてしかるべきだ。今回のような戦争に国が関与している場合、偶発的なできごとをすべて予測できる人は誰もいない。だが、株式市場と債券市場が日米開戦という衝撃の一報を冷静に受け止めたことは、最も好ましい兆候であるのは間違いない。これは少なくとも「備え」があったことの証拠だ。

タグ:真珠湾攻撃
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